はじめに
私たちの周りには、日常生活を豊かにする無数の技術が溢れています。しかし、現在の技術もやがてはその限界に達するでしょう。
そんな中、科学の最前線で注目を集めているのが「量子情報技術」です。この記事では、量子情報を触れるにあたってのキソのキソを解説していきます。
量子情報での基本概念
量子情報のもとになる量子力学では以下の3つが重要な概念とされています。
- 物理系
- 状態
- 物理量の測定
まず物理系です。これは測定する対象とする物体の集まりのことを指します。
例えば、車の速度を測定したいのであれば、車が物理系、ということになります。
量子情報では、電子や光子を対象とする事が多く、そのような量子力学的効果(後ほど説明します。)が現れる物理系は
量子系と呼ばれます。
次に状態です。これは感覚としては言葉どおりに思っていただければよいです。
例えば人ならば、「調子がよい」、「風邪をひいている」といったことです。
量子力学では「物理量の測定結果の確率分布」を指します。(これも後ほど説明します。)
最後に物理量の測定です。
先ほどあげた状態を知るために私達は測定を行います。
例えば車の状態を知りたければ、速度の測定であったり、
人であれば、体温の測定であったりです。
この測定を行うことで私達ははじめて、物体の状態を知り得ることができます。
量子効果について
量子効果は、量子情報技術において中心的な役割を担っており、その不可思議な性質は従来の古典物理学では説明が困難です。
量子効果を理解するためには、次の2つの主要な概念を押さえる必要があります。
- 重ね合わせ
- 量子もつれ
まず、重ね合わせについて説明いたします。
量子力学の効果が現れる物理系(量子系)では測定値が測定ごとにランダムに観測されます。
ビットを例に例えると観測する事に「0」と「1」がランダムに測定される状態です。
このように、量子系が複数の異なる状態を同時に取りうる性質を重ね合わせの原理といいます。
例えば、量子ビット(またはキュービット)は0と1の状態を同時に保持することができ、これが量子計算のミソとなる部分です。
次に、量子もつれについて説明いたします。
これは、二つの量子ビットが相互に関連し合っている状態を指します。一方の量子ビットの状態が決まると、もう一方の状態も即座に決定されるという不思議な現象です。これにより、情報を瞬時に共有する「量子テレポーテーション」など、新たな技術の実現がなされています。